海外にルーツを持つ子ども・若者の専門支援事業YSCグローバル・スクール活動説明会&授業公開

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2018.09.01ニュース

インターン生を受け入れました

6月末から一か月間、パリの大学院で、国際移住に関して研究をされている大野結希さんをインターン生として受け入れました。
最後に大野さんがインターンをしてみて学んだことや思ったことなどをまとめてくださったので、こちらでご紹介させていただきます。
初日から子どもたちとすぐに打ち解けて、生徒たちにとってお姉さん的存在だった大野さん、短い間でしたがありがとうございました。
これからますますご活躍されることを心から願っております。


「インターン生から見たYSCグローバル・スクール」

1.インターンに応募したきっかけとは
6月末から約1ヶ月間、週2日間ほどYSCグローバル・スクール(以下YSCGS)でインターンシップをさせていただきました。
短い期間でしたが、日本語支援の現場を自分の目で見るとても良い機会になりました。
インターンに応募した理由を述べる前に、自己紹介をさせていただきます。
私は日本生まれ・日本育ちですが、小学校5年生から中学校1年生までをフランスで過ごし、その後東京にあるフランス人学校(Lycée Français International de Tokyo/東京国際フランス学園。在日フランス人のために建てられた教育機関。授業はフランスの教育省のカリキュラムに沿って行われる。)で中等教育を終えました。
初めてふれる外国語に苦戦し、文化の違いや人種差別に悩まされたフランスでの2年間は「良い思い出」とは言い難いものでした。
帰国後は帰国子女という理由で、日本育ちの友人と再会してもどこか疎外感を感じていました。
これらの経験から複数の文化の狭間に生きる人々に寄り添いたいと思い、大学院では国際移住を専攻することにしました。
とりわけアイデンティティーや語学習得について興味があったことが、今回インターンに応募した背景にあります。
他にも日本語支援団体があるなか、私がYSCGSをインターン先に選んだのは子どもを対象に「包括的」な日本語支援をしているからです。
事業責任者である田中宝紀さんの記事を数年前から拝読していることもあり、実際の支援現場を自分の目で見てみたいという思いが募り、今回インターンに応募するに至りました。


2.YSCグローバル・スクールについて
私はYSCGSほど受講者のニーズに合わせた授業を行っている日本語支援団体を知りません。
YSCGSでは語学力、年齢、進路等に合わせた授業が週5日間、朝から晩まで組まれています。
語学習得だけでなく、教科学習にも力をいれているのが特徴です。
例えばYSCGSには日本語で数学や英語を学び、面接の練習をしながら進学に備えている生徒が多数います。
すでに英語が話せる生徒もいますが、日本のカリキュラムに沿って学習することは日本で進学するにあたり必要不可欠です。
一般的に「日本語支援」というと語学力を伸ばすことを重視しがちかと思いますが、私はインターンを通してYSCGSはもっと広い意味での「学習支援」を行っていると解釈し、感心しました。


3.YSCグローバル・スクールで印象的だったこと
NICO Projectというオンライン受講できるシステムも画期的です。
従来の動画学習とは違い、教師とオンライン受講者がリアルタイムで会話をしながら授業を進めるのが特徴です。
インターン中、教員の方々が常にカメラの向きや教材の見やすさを意識して授業を準備していたのが印象的でした。
また、職員や生徒たちが休み時間中にオンライン受講者に積極的に話しかけたり、遠隔地に住む受講者が学校に顔を出した際、職員と生徒たちが温かく歓迎したりしていたのが微笑ましかったです。
授業のほかにも、子どもたちが日本の学校に適応しやすいよう様々な工夫が凝らされています。
例えばお昼休みの後には「そうじの時間」があったり、地域の夏祭りに出店した際は看板を作る時間があったりと、当初私がイメージしていた日本語学校とは違う風景を目の当たりにしました。
教室の掃除や文化祭などは日本独自の風習なので、子どもたちはYSCGSで日本の学校生活の予行演習ができるのです。
また、YSCGSが「居場所づくり」に重きを置いているのに深く共鳴しました。
受講者の中には言葉の壁だけでなく、社会性の障害など様々な理由で日本の学校に馴染めず、居場所を求めてYSCGSへ通う子どももいます。
私は一ヶ月という短い期間の中で、目に見えて子どもたちの表情が明るくなっていくのに驚かされました。
とりわけ来日してから間もない初級クラスの子どもたちの変化が顕著でした。
私がインターンを始めた頃はあまり笑顔を見せなかったとある生徒は、数週間後には同級生と休み時間にふざけあうようになり、私にも積極的に日本語で話しかけてくれるようになりました。
また、サマースクールに来た別の生徒は、最初の数日間は周りとの接触を拒みがちでしたが、日が経つにつれ表情が豊かになり、サマースクールが終わる頃には他の生徒ともコミュニケーションを取るようになりました。
このように子どもたちが語学力を伸ばし、居場所を築くことができるのは、彼らと真摯に向き合う(教員以外のスタッフも含む)職員の方々の努力の賜物です。
職員の方々は各生徒の生い立ちや個性を把握し、休み時間も彼らに積極的に話しかけ、毎授業ごとに各生徒の学習態度などを記録していました。
そして今後の指導法や接し方について常に意見交換を行っていたのが印象的でした。


4.イベントに参加して気づいたこと
YSCGSの居場所支援は施設内にとどまりません。
前述の地域の夏祭りでは、生徒たちはかき氷屋台を体験しました。
一所懸命に日本語で呼び込みをする子どもや、かき氷作りと接客に励む子どもの姿を見て、足を止めてくれる地元のお客さんが多数いました。
このように彼らが地域社会と関わりを持つことは、彼らが日本での生活の基盤を作り、(広い意味で)外国人定住者が地域社会に受け入れられていくのに欠かせないため、YSCGSの取り組みにますます感心しました。
近所付き合いが希薄なフランスに比べ、地域社会の活動が盛んな日本だからこそできる取り組みだと思いました。
また、福生市七夕祭りは規模が大きいだけでなく、屋台が多文化なことに驚きました。
インドやネパールの方々が自国の料理を屋台で販売している姿を見て、私の地元でも外国人住民がもっと地域のイベントに参加できたら素敵だな、と思いました。
それと同時に、近所のネパール人コミュニティが大きくなっているのにもかかわらず、彼らと全く接触がないことに寂しさを覚えました。「自分の身近なところから活動を始めてください」と宝紀さんがインターン初日におっしゃっていたのを思い出し、自分自身を顧みるきっかけになりました。


5.おわりに
最後に、YSCGSでは日本語がルーツが異なる人同士を繋ぐ「架け橋」になっているのが素敵だと思いました。
私の場合、フランス語とは私とネイティブスピーカーを繋ぐ言語であり、「西洋文化に適応することを強いる言語」という抑圧的なイメージが未だに拭えません。
しかし、英語を話す時はネイティブ以外と話すことが多いためそのような緊張感がなく、英語を「世界中の人と自分を繋ぐ言語」として認識し、楽しみながら使用しています。
YSCGSで子どもたちが「仲間や先生と自分を繋ぐ言語」として日本語を習得できるのは、今後子どもたちが日本で生きていく上で励みになるはずです。
もちろん日本社会で苦労することも多いでしょうが、(私にとって英語がそうであるように)日本語を「架け橋」のように認識できることは日本語を話す時の自信につながると思います。
YSCGSの学習支援は想像以上に「包括的」でした。
公的支援が不十分ななか、こんなにも温かい成長の場を子どもたちに提供しているYSCGSに心から感動しました。
私は今後移民支援を生業とするかは分かりませんが、このインターンを通して、どんな形であっても支援を続けたいという気持ちが固まりました。
今後どのようなキャリアを歩むにしても、宝紀さんの言葉を胸に刻んで「自分は身近なところでまず何ができるか」を考えてみようと思います。
宝紀さんをはじめ、お忙しいなか快くインターンを受け入れてくださった職員の方々にこの場を借りて感謝申し上げます。

2018年8月15日
パリ政治学院 修士課程2年 大野 結希

※一番右端の方が大野さん

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